大学に行った子供に仕送りをしなくてはならないのに、主人の転職で収入がめまいがするくらい減ったことがあった。さらに住宅ローンは重く、家を守らなきゃいけないと思いました。鬼のように働くしかない、と決心していました。
頭の中はお金の悩みでいっぱい。昼間は事務の正社員、土日祝日はヘルパーさんとして訪問介護を5年間も続けました。
明るいお年寄りたちは私の作ったみそ汁やオムレツを楽しみにしてくれてお話も弾み私にとっても貴重な経験となりました。活躍していたころの昔話を聞くのも楽しいひと時でした。
そんな中、鍼灸師のご主人に先立たれおひとりでがんの闘病をされていたKさん。お年は86歳。ベッドに横になった切り 日に日に弱ってゆく姿は傍らにいてもやりきれない無力さを感じました。
重篤な状態なのに小さなアパートで一人で耐えていらっしゃる。入院できない事情もあるのかもしれない。もちろん訪問の医師は来るが先進の技術が施されているようでもなく 天に召されるその瞬間をヘルパー仲間も予感し始めていました。
そんなある日、体の清拭を行っていた時に、 不意にKさんが私のエプロンを見て言いました。
「そのマークは何?」
「これですか? 私、○○のヘルパーですから、○○のマークですよ」っと答えると
「いいねぇー。私も働きたい。人の役に立ちたい」 とおっしゃいました。
死の床に伏していながらも働いて人の役に立ちたいと思うものなんだ・・と驚きました。
それから半月後にKさんが亡くなったと聞きました。
その言葉が私の心に染み込んで、だんだんと大きくなり、動き始めています。私もきっともっと年をとってもKさんと同じように働いて人の役に立ちたいと思うんだろうな・・と思い始めています。
退職してもきっと何かやらずにはいられないと思っています。